皆さん、こんにちは。
フレグランスメーカーのアート・ラボがお届けする【フレグランス・ラボ通信】今回も魅力的な花たちのお話です。
第7回に引き続きESSENCE & FLEUR Vol.2として「ジャスミン」の香りについてお話をします。
ジャスミンの分類と香気について
ジャスミンは、モクセイ科ソケイ属(学名:Jasminum)の植物の総称です。
ジャスミンと一言で言ってもスペインジャスミンやジャスミン・サンバックと言われるように種類があります。
ソケイ属の中では約200種もあるとされています。
インド、中国や東南アジアなどのジャスミンは、ジャスミン・サンバックあるいはアラビアンジャスミンと言って調香の際には区別して表記することも多いです。サンバック(sambac)とは茉莉花のことを指します。
あくまで私の主観ですが、サンバックの方は個性が強く全体としての香調も重く感じます。
3大フローラルのひとつ!ジャスミンの香料
さて、そんなジャスミンですがフレグランスの世界では非常に多用される香料でとても人気があります。
ローズ、ミュゲ(すずらん)と並ぶ3大フローラルとされていますが、多くの名香と呼ばれるフレグランスには、ほぼもれなく配合されていると言っても過言ではないでしょう。
品種にもよりますが、春から秋と長い期間花をつけるそんなジャスミンですが、開花するのは夕方から夜にかけてだそうです。
南国の夜にその芳香を増すということを考えてもエキゾチックですね!
東洋のエキゾチシズムに魅せられてつくられたパフュームがオリエンタルノートと言われるようにこのジャスミン・サンバックに合わせると相性がとてもいいのがマレイ半島原産のイランイランです。
同じく東洋をイメージできる濃厚でパウダリックな香調なのでジャスミンとはよく合います。
そしてその代表的なフレグランスが、TOM FORD(トムフォード)のJASMIN ROUGE(ジャスミンルージュ)です。
T O P: ベルガモット / マンダリン / シナモン / ジンジャー / カルダモン / ペッパー
M I D: ジャスミン・サンバック / エニシダ / ネロリ / イランイラン / クラリセージ
BASE: メキシカンバニラ / ラブダナム / レザー / ウッディー / アンバー
まさにジャスミンとイランイランの競演ですが、トップのマンダリンやベルガモットとスパイスがアクセントをつけています。
また、ベースノートのバニラとラブダナムやアンバーがその奥行きを演出しています。
また、すっきりとした香調がお好きな方には、エルメスの「庭シリーズ」でおなじみの調香師ジャン・クロード・エレナさんが作った「李氏の庭」がお勧めです。
彼がアジアの旅で浮かんだインスピレーションをもとに創作されたものですが、爽やかなキンカンとミントがアクセントとなってジャスミンのやさしい甘味が広がります。
キンカンとミントにジャスミンという非常にシンプルな香調なのは、彼が師と仰ぐ「エドモンド・ルドニツカ」から学んだミニマリズムという調香スタイルに則っているからだと想像できます。
勿論、それ以外にも計算された香気成分が絡んでいることは間違いありませんが・・・。
ジャスミンの香りは太古の昔から親しまれてきた香りですが、あのクレオパトラも好んだ香りのひとつだと言われています。
当時は花弁をオイルに漬け込んで香油として使ったとされていますが、いずれにしても花から採取できるオイルはごく少量なので多くの花が必要となります。
そのため非常に高価な香料であることはローズと同じか、もしくは種類によってはそれ以上の金額になるものも少なくありません。
ですので、高価なエッセンシャルオイルを買うのも躊躇うなと思う方にはジャスミンティーを試されるといいでしょう。
茶葉に熱いお湯を注ぐと香りが部屋中に広がってゆきます。
勿論飲んでもいいのですが香りを拡散させる目的で使うのも一つの方法です。
お好きな方はバスタブにいれて楽しんだりします。
ジャスミン茶は緑茶ベースですが、緑茶の中でも釜炒り茶と言って釜で炒って酸化発酵を止めた茶葉を使っているのですが、カテキンやテアニンといった緑茶成分に加えて花の成分でもポピュラーなリナロールが豊富に含まれています。
このリナロールには鎮静作用や抗不安作用、抗菌作用などが期待できるともいわれていますので、手軽にジャスミンを楽しむ方法として是非お試しください。
また、ルームフレグランスとしてジャスミンの入った香りを下記にご紹介しますので、お部屋で楽しみたい方には是非こちらもお試しください。
それでは次回の「香りのエトセトラ」でまたお会いしましょう!